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中小企業の顧問弁護士

 毎年,国会では多くの法律が成立します。条文数が何百に及ぶものもあれば,わずか1~2条に過ぎない法律もあります。基本となる法律に関連して何十もの政省令や府令が作成されているものがあったり,関連する法律だけで数十にも及ぶものもあります。全ての企業が対象となるような法律もあれば,一部の企業のみに適用される法律もあります。しかし,社会が複雑化するにつれて,法律の定めは年々複雑精緻になって行くことだけは否定しがたい事実です。又,法律だけでは解決出来ない問題が,最終的に裁判所の判例等によって決せられる場合も少なくありません。

 これに伴って,我々弁護士の仕事も専門化が進みつつあります。昔なら行政事件,知的所有権事件,労働事件くらいが専門分野だと言われました。しかし最近は,企業再生,企業の内部統制,中小企業の事業承継,その他,企業に関わる専門分野はどんどん増えています。又,直接,企業活動とは関係がなさそうな分野においても専門化はどんどん広がっています。

 ところで,企業が,取引先の倒産に遭遇したり,従業員の交通事故や労災事故,労働問題,税金問題,公害問題,消費者対応などに関連して,法的サービスを必要とする場面は,益々増えていくばかりです。最近では,株主総会対策として,問題が発生する前に調査を求められるケースも増加して来ました。

 このような場合,大企業であれば,起こった問題ごとに適当な専門家にその処理を依頼することは困難なことではないでしょう。顧問弁護士,顧問事務所を何軒も有している大企業は少なくありません。しかし,中小企業の場合は,そんな余裕はありません。中小企業にとって,一人の顧問弁護士,顧問事務所を確保しておくのも大変なことです。ところが,その顧問弁護士,顧問事務所が,専門外なので対応出来ないと問題解決から逃げてしまっては,顧問が務まるはずはありません。他の弁護士はいうに及ばず,公認会計士,税理士,司法書士,その他の同業や他士業とのネットワークを維持,充実させながら,初期段階の対応を誤りなく選択しなければなりません。そして,問題の重要度によっては,他の専門家に処理を委ねねばならない場合も少なくありません。そのためには,顧問弁護士,顧問事務所の側も,日常的に研鑽を積み,専門的なノウハウまでは有していなくても,いろんな問題に対して,少なくとも誤りのない初期対応をアドバイス出来ねばなりません。又,同業や他士業とのネットワークを維持,充実させておいて,問題解決の糸口を掴まねばなりません。

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